「言いにくいことをうまく伝える会話術」

ハーヴァード・ネゴシエーション・プロジェクト
ダグラス・ストーン、ブルース・パットン、シーラ・ヒーン著、松本剛史訳
「言いにくいことをうまく伝える会話術」
原題:Difficult Conversations

弁護士として法律上の論点の指摘をするのは、会話として、ハードな場合があります。
法律上の論点の指摘をすると、まるで足を引っ張っている人のように思われることなどもあります。ただ、世の中、そのような会話方法の研究はたぶんあるはずで、私だけの問題ではないはずで、何かいい本はないかなと思っていたところ、上記の本を見つけたので、図書館で借りてきました。

読んでいて、あまりに面白くて、読みながら笑ってしまうところすらありました。

あとは、「部下にレイオフを伝える」「子供に親の離婚を伝える」といった場面で、矮小化することは結局できないと。「レイオフされた方がかえってよかったよ」「親が離婚した方が子にとってよいんだ」とかって言おうとしだすと混乱するわけで、「ママとパパは離婚します。そして、あなたのことを心から愛しています」と言うように、話を聞いた人の悲しみ・混乱とこちらの善意は両立するということ。ANDで話をつなげるということかなと思った。変にごまかさない。自分の感情やアイデンティティの問題も直視するということかなと思った。丁寧な表現で率直に伝えて、相手に敬意を払って相手の意見を聞く。
3年後・5年後・10年後ぐらいにまた読んでみたい。多分また違う感想を持つだろうから。

気になった点

  • 会話は3つにわけられる:①何があったかをめぐる会話、②感情をめぐる会話、③アイデンティティをめぐる会話
    • 感想:まずこの分類が役に立った。確かに②感情と③アイデンティティを出すまいとするから話が混乱するように思う。
  • ①何があったかをめぐる会話
    • 解釈・評価・判断をめぐってすれ違いが起きる。「このミスは些細なミスか、重要なミスか」「私は正しいのか、間違っているのか」
    • お互いのストーリーを掘り下げよう。
      人は違う背景で違う物を見ている。アンドルー(4才)とおじさんが近所のパレードを見に行った。アンドルーは台車を引いているトラックしか見ず、おじさんは台車に乗ったチアリーダーを見ていた。アンドルーがトラックに夢中だというのはおじさんの見方であり、アンドルーから見ればおじさんはチアリーダーに夢中である。4才児の集団に入れば、アンドルーの見方はむしろ正常。
      自分の過去を踏まえて、自分にとって重要な暗黙のルールを踏まえて、事実を見ている。相手のストーリーへ好奇心を持って、相手は相手が理にかなっていると思うのなら、どんな風に世界を見ているのか。
      絶対に私の方が正しい場合、例えば友達がアル中の場合に、友達がアル中であることは事実だとしても、それを主張して認めさせようとするだけでは友達を救う役には立たず、友達のストーリーを理解し、自分のストーリー(友達の飲酒が私に与えた悪影響)をわかってもらう。
    • お互いのストーリーは二者択一ではなく、AND(なおかつ)で成り立つ。わたしはあなたと別れるつもり。なおかつあなたがどんなに傷ついているか知っているし、もう一度やり直すべきだと考えるのもわかる。なおかつ私は決心を変えるつもりはない。
    • 意図と影響を切り離そう。
      相手の意図を悪く憶測してしまう。ただ、意図が良ければ悪影響が帳消しになるわけではない。「なぜ私を傷つけようとするのか?」と聞かれても、良い意図だと言えばいいわけではない。言いたいことは「あなたは私のことを十分に気にかけてくれない」ということであって、非難を聞き流し、相手が本当に言いたいことに耳を傾ける。自分の動機・意図も本来は複雑なはずである。悪い意図があると言って相手を責めると防御的反応を引き起こす。
      ①行為(相手の実際の言動)②影響(①による私への影響)③想定(私は相手の意図にまつわるどんな想定をしているか)を切り分けて考える。
    • 相手に責を負わせようとせず、お互いの加担を考える。加担という日本語があまり直感的に理解できないが、要は全く落ち度がなくても、因果関係があれば加担というというような意味か? 強盗被害にあったとしても、私が間違ったことをして罰せられるべきという話ではなく、私は何かこの状況が生じやすくなるようなことをしたかという観点で考える。自らの加担について述べた後、相手の加担について自分の観察と推論をはっきり伝え、相手に何を変えてもらいたいかを明らかにする。
      ※イマイチ加担の記載はよく理解できなかった。
    • 感想:何が起きたか話そうとしても、こちらか相手か又は両者が評価・責任をジャッジする話かと防衛的になるのが、混乱の基かと思った。評価・責任ではなく、事実面を将来をよくするために相手のストーリーから理解するということか。こちらがまずはその態度で臨む。それがまず大事だが、相手の防衛的態度を緩めるというのは極めて困難な気がする。それこそ稀有な能力がないとできないような気が。この本では、仲良くしたいけれどもすれ違う人同士の会話だからうまくいくような気がして、ビジネス上の会話ではこの本よりハーバード流交渉術などを読んだ方がよいかもしれない。
  • ②感情をめぐる会話
    • 感情をめぐる会話を避けようとするが、避けてはいけない。感情を大事にしないと、感情に飲み込まれる。認められない感情は会話ににじみ出て爆発する。感情を抑えると相手の話に集中できず、自尊心と相手との関係を損なう。
    • 感情を抱くのは自然。いい人でも悪い感情を抱くことはある。
    • 自分の感想は相手の感情と同様に大事なものであることを知ろう。あなたが自分の感情を無視してまで相手の感情を尊重する場合、あなたは自分自身の感情を過小評価している。友人などはそれを見て取り、あなたをくみしやすい相手と見始めるだろう。あなた自身の感情よりも相手の感情ばかり気に掛けるのは、相手にこちらの感情を無視するように教えているのと同じだ。
      →感想:ここがとても大事。これができないと、「優しくするとつきあがる人がいる」問題が勃発すると思われる。私の昔のブログ
    • 自分の感情も複雑。母親に就職しろと言われて怒っている息子も、怒りのほかに、不安、恥ずかしさ、母をがっかりさせている気持ち、母の愛情への感謝などを感じている。
    • 相手を責めたいという衝動は、感情が抑えられているときに生じる
    • 感情が大事なものだと心にとめる。
    • 決めつけ、判断、非難ではなく感情を伝える。「私はこう感じるのだけど…」で始める。
      ×あんなに言ったのに電話をくれなかったのね。わたしが傷ついたのはあなたのせいよ。
      〇あなたが電話をくれなかったとき、私は傷ついた。
    • 自分だけが強い感情を抱いていると考えない。あなたが強い感情を抱いているなら、十中八九相手も同じ。
    • お互いの感情を認め合う。つまり、相手の言ったことがあなたにどんな印象を与えたかを、相手の感情があなたにとって重要であることを、あなたが相手を理解しようと努めていることを相手に知らせる
    • 感情を飛び越えない。「君が寂しいなら、もっと君と過ごせるように努力しようと思う」などと一足飛びに言わない。この話題があなたにとって重要であることを認め、次にあなたの感情をきちんと理解し、そしてあなたがそれを伝えたことを尊重してもらう。
    • 感想:ここが全くできていなかった。相手の感情が重要でありわかろうとしていることを伝えたうえで、自分の感情を認め、相手に話、大切に扱ってもらう。
  • ③アイデンティティをめぐる会話
    • 自尊心、自己イメージに与える影響。良き隣人という自己イメージを持っているのに、攻撃的に思われるとすると落ち着かない。
    • 自分はこうありたい、こうありたくないと恐れる私たちのアイデンティティを脅かされると極めて重要な問題となる。
    • 多くの不安①私は有能か、②私はいい人か、③私には愛される価値があるか
    • All or Nothing思考をやめる。相手の意見が自分についての唯一の情報ではない。
    • ステップ1:自分にとって何が重要か知ろう
      あなたのアイデンティティが危険にさらされるのはどんな場合か?どんな意味を持つか?
    • ステップ2:矛盾もあるがまま受け止めよう
      「私は完全だ」か「私は価値のない人間だ」という01思考をやめる。
    • 相手の反応を予想し(例、泣き出す、怒る)、それが自分のアイデンティティと絡んでくるか考えておく
    • 感想:これも全く考えていなかった。大体、ビジネスや学習において相手が怒りだすのは、私は有能か問題を相手が抱えている場合のようには思うが、それをこちらにぶつけられてもという気はする。
  • そもそも話し合うべきか
    • 本当の対立が自分自身の中にある場合は相手と話し合うべきではない
    • 当て逃げはいけない。「またお酒ばかり飲んでいるのね」ではなくきちんと話し合う
    • 問題を手放すのも一考
  • 話の切りだし方
    • 自分の見方や相手に対する判断から始めない。調停者の視点で話を始める
    • ×「貴女の息子さんはクラスでよく問題を起こすことがあります」
      →〇「クラスでの息子さんの振る舞いについてお伝えしたいことがあります。それから何が原因となっているか、あなたの感じていらっしゃるところをもっとお伺いしたいのです。以前の内容から、私とあなたとではこの点についての考え方に違いがあることはわかっています。私たち二人で何が原因で息子さんはああいう振る舞いをするのか、この先どうしていけばいいか考えられるのではないかと思うのです」
    • ×「あなたが言ったことで私はひどく動揺させられた」
      →〇「今朝の会議について話したいの。あなたが言ったことに動揺させられたわ。何が私を悩ましているか説明して、この状況に対するあなたの見方も聞きたいの」
    • ×「おまえが遺言状に異議を唱えたら家族がばらばらになってしまうよ」
      →〇「パパの遺言状の事でお前と話したい。私とお前とでは明らかにパパの意図やどうすればフェアかへの理解に違いがあるようだ。私はお前の考え方を理解したいし自分の見方と感情を伝えたいとも思っている。それから裁判になれば家族にどんな影響があるか強い感情とおそれを抱いている。そしてそれはお前も同じじゃないかと思う。
    • あなたの目的を説明し、会話を強制することはできないが、会話に誘いかける。
    • 悪い知らせを伝える場合は、ふつうはまずその悪い知らせをはっきり伝えるのが良い。「別れたいと思っている」という前に「きみはぼくらの関係をどう思う?」などと聞いてはならない。
    • 要望を伝える場合は、「…することは理にかなっているだろうか?」と聞く。「私が昇給することは理にかなっているかどうかを考えてみたいのです。私の知っている情報からすれば私はそれに値すると思うのですが(理由を述べる)、あなたはどうごらんになっているでしょう?」
    • 以前失敗した話し合いをもう一度話し合う場合、どう話し合うべきかを話し合う。「あなたがスケジュールを話し合いたくないのはよくわかっているわ。少なくとも私が持ち出すやり方ではね。私にとって問題なのは私がとても心配していて、それがなぜなのかを役に立つような形で伝えたいって言うこと。でもどうやって伝えればいいか私にはわからないみたいだから、貴女の方から何かアドバイスをもらえないかと思って」
    • あなたと相手がそれぞれどういう過去の経験から現在の状況を今のように見るようになったかについて話してもいい。「私があんなに強く反応したのは、以前支払を受けられなかったときに事態がますます悪化しただけだったからだ」
    • 相手が話を聞こうとしないのは、自分の言うことを聞いてもらえていないと感じているからだ。私の目的が説得や勝つことや相手に何かをさせることではなく、相手を理解することなら、熱心に聞くことができるのでは。相手の話に集中できないときはそのことを伝える。
    • 「私の気持ちに集中することはできないの?」といった質問は×。
    • 相手の言葉を言い換えることで、ちゃんと聞いていることを示し、相手の感情を認める。
    • 相手が攻撃的なときは、相手につられずに、正しい会話枠組みにはめ直すように粘り強く接する。責任や責めではなく加担の枠組みに戻す。
    • 相手の態度が話し合いの障害の場合はそれを伝える。「ちょっと待ってほしい。もう何度目かになるが、私が自分にとって重要なことを言うと、あなたはこちらが怖くなるほどの勢いで怒りだしてしまう。貴女の反応がどこから来るものか、私にはわからない。もし動揺しているのなら理由を聞かせてもらいたい。あなたが私を脅して気を変えさせようとしているなら、それはうまくいかないだろう。私は何があなたを動揺させているかを心から知りたいし、なおかつ私が恐ろしく感じずに話し合うにはどうすればいいかを見つけていきたいと思っている」
    • 相手が何に納得できるかを尋ねる「週末の計画を取りやめて仕事をすることがなぜ私にとって理にかなっていないのか、理由をたくさん示しました。それでもあなたは仕事することを主張される。私がまだ聞いていない理由があるのですか?そうでないなら、私の方から何かあなたを納得させるために言えることがあるでしょうか?」
    • 感想:すごいもっともな話で納得させられるが、これができたらいいなあというか、ひどく難しいことのように思う。真の意味でコミュニケーション能力が高い人はこうしているんだろうなと思わせられる。なかなかこの能力は一朝一夕では身につけられなそう。繰り返し繰り返し考えていきたいところ。
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